儲ける為には学べ! コイン雑誌紹介①

「学ばざるものは儲からない!」 それはアンティークコインについても言えることだ。過去のコレクターが何に関心を持ち、何で悩んだかを学ぶことは、将来性のあるコインとは何かということを学べる。なぜならコレクターが競って欲しくなるコインは必ず値があがるからだ。ということで過去・現在に発行されたコイン専門誌・定期刊行物を紹介いたします。過去の興味ないというお方は読み飛ばしください。

  最初にあげるのは「月刊ボナンザ」。1965年から1984年の頌文社から発行された月刊誌でコイン専門誌の草分け的存在だった。廃刊されてから36年もたっているが、いまだに古書店やネットオークションでも見かける。が、コンプリートすることは至難だ。雑誌の性格上、総ページ数の約半分は即売会情報やコイン商の広告だが、記事のクオリティは高く、自分の収集分野でなくてもマニア心をくすぐる。例えば76年8月号には「中国コインに描かれた龍八態」として8種のコインの画像が掲載されている。中国人に負けず劣らず日本人も龍が好きだ。小生も龍コインに凝った時期がある。残念ながら7種止まりでコンプリートならずだった。中国コインが高騰してしまった現在では諦めざるを得ない。なお、龍の絵柄のコインは中華文明圏には多い。安南、韓国、日本、シンガポール、北朝鮮……全てコンプリートできたら壮観であろう。一方ヨーロッパ圏のコインにも龍は「ドラゴン=竜」として登場する。セント・ジョージの竜退治だ。本家イギリスを筆頭にロシア、ハンガリー、ドイツ諸国にもあったような……。しかし東洋では皇帝の象徴である「龍」が西洋では「竜」として聖人に退治される存在となっているのは納得がいかない。

 コレクターはあるテーマを決めて絵柄でコレクションすることも多い。そしてどのようなコレクションにせよ、キーコインというなかなか入手できないコインが存在し、それを求めてコレクターが競う。従ってキーコインの状態のいいものは、値上がりする。雑誌ボナンザに目を通しているとそんなことに気がつかされる。ボナンザは古書店でも入手は困難になりつつあるが国会図書館に全てそろっている。


 「貨幣研究」ー1975年に貨幣文化協会から創刊され年4回発行された。貨幣文化協会が何なのか不明だが、編集顧問・発行人に平木啓一氏が名を連ねていることから推察するに氏が経営していた株式会社ジェミニが主体の団体ではないかと思う。平木啓一氏は1974年に「世界貨幣大辞典」という豪華カタログを出版しており、「貨幣研究」も平木氏の一等級の知識を活かして刊行された雑誌なんだろう。創刊号の記事「ナポレオン一族の貨幣とメダル」、「仏領インドシナの貨幣制度史」、「ブランデンブルグ・プロイセン貨幣史沿革」など「貨幣収集と研究の本格的資料誌」の名に恥じない内容だ。また創刊号の表④に入っているジェミニの広告も優れものだ。「世界史上のライバル その1 ヴァレンシュタインVs.グスターヴⅡ世アドルフ」というテーマでドイツ30年戦争で戦った二人の王のコインとその逸話を紹介している。単にコインを販売するのではなく、歴史とセットで販売するという姿勢は当時としては斬新だったに違いない。コレクターは歴史好き・蘊蓄好きの性癖を持っているので、この広告手法はコレクターの心を刺激する。「貨幣研究」は外国コインに関する文献がほとんどなかった当時としては、外国コイン収集のためにバイブルと言って過言ではない。一方ジェミニは即売会やオークションを開催していた。古銭販売というビジネスを始めたのはロスチャイルド家だったとどこかで読んだ記憶がある。ロスチャイルドは王侯貴族に古銭を販売する際に、その歴史的経緯をカタログにして販売したそうだ。「貨幣研究」で外国コインの価値を伝える研究を発表し、一方ジェミニはクオリティの高いコインを輸入して販売する。まさにロスチャイルド商法だ。

 上の写真は株式会社ジェミニ主催の即売カタログとオークションカタログだ。1977年のオークションカタログの一部を紹介しよう。ロットno.114「オーストリア 2ターレル 1867年南部鉄道開設記念」。現在でも人気の高い大型銀貨だ。落札価格は不明だがカタログには95万円と記載されている。落札予想価格なのだろう。コインの状態にもよるが、この価格は2000年頃の相場に近い。そう考えると高く感じる。外国コインは輸入品だ。海外での価格が同一だとしても為替相場の影響を受け国内販売価格は変化する。円高になれば輸入価格は安くなるし、円安になれば高くなる。同コインは1977年に95万円だったものが、その後の円高に従いどんどん価格が下落していき、20年後にやっと元に戻ったということになる。2014年以降は、ドル相場が110円を中心にプラスマイナス10円の幅で推移しているので、現在のコレクターは為替相場という視点を持たない方が多いが、コイン投資やコインコレクションをする上ではそれを忘れてはいけないという教訓がここにある。

 小生の手元には「貨幣研究」は1976年発行のno.8までしかなく、また株式会社ジェミニがその後どうなったかネットを検索しても出てこない。業界に方に聞いたところ倒産したとのことだ。だれもその経緯を詳しく語ろうとはしない。しかし「貨幣研究」とそれ以外の平木氏の一連の書籍が外国コイン収集というジャンルで果たした業績は偉大である。


「コイン雑誌紹介②」に続く

コイン収集歴30年 アンティークコイン図書館

外国コインを収集して30年のコレクターです。コイン収集の魅力に取り憑かれ、気がついたらオークションカタログや雑誌、参考文献、関連図書が山積みとなっておりました。いずれは棄てられてしまう可能性が高い書籍たちです。貴重な資料もあるので、その内容をWEBに残しつつ、コイン収集の魅力を紹介したいと思います。

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