贋金・贋札作り①
贋金とはニセ金ことだ。贋金の歴史は想像以上に古い。日本では「続日本紀」の701年に「私鋳銭者に懲役刑を科する」と出ている。これは日本最初の貨幣といわれた和銅開珎の発行された708年よりも古い。海外の事例は文献を調べきれてないので不明だが、貨幣の誕生とともにあっただろうと推測される。贋作はコインコレクションの大敵である。小生が30年前にコレクションを始めた頃に見かけたものは、かなり稚拙でひと目で贋作とわかったが、ここ10年は贋金製造業者のレベルがあがったため見分ける自信がなくなってきている。
英語サイトだが、中国での贋金作りを特集した「Inside a Chinese Coin Counterfeiting Ring」というのがある。贋金つくりの様子を実際を見ることができる。
https://www.thesprucecrafts.com/chinese-coin-counterfeiting-ring-4071202
このサイトでは中国コインをはじめモルガンダラー、イギリスのクラウン銀貨、ギリシアの5ドラクマ銀貨の贋金作りの写真があげられている。さらに裸のコインだけではなく、NGCやPCGSなどのアメリカの鑑定会社のスラブ入り入りも贋作している! このサイト記事は2007年とかなり古いので、現在の贋金作りはさらに進歩しているはずだ。NGCやPCGSは贋作スラブ対策として、ホログラム入りのシールをつけたり、あるいはスラブに記載された登録番号を検索すればそのコインの写真を確認できるなどの対策を施している。が、贋作者もそれに対抗すべく新たな対策を立てる。NGCやPCGSに登録されたコインと同じ年号・同じ額面の贋金をスラブに入れて売り出す。これに対抗しPCGSやNGC側は贋作スラブの見分け方をサイトで紹介するなど、「いたちごっこ」が続く。
さらなる別の問題もある。NGCやPCGSはアメリカの鑑定会社なので、アメリカコインに関しては一流の鑑定眼をもったスタッフを揃えている。が他の国については「!?」と思うことがあるとコインディーラーから聞いたことがある。例えば過去に一度も鑑定したことがないコインを鑑定してスラブに入れる(つまり本物であると保証する)としたら、専門家でも判断に迷うことはある。小生のコレクションからその具体例をあげよう。
上のコインは1899年イギリス貿易銀で裸の状態で日本のオークションで落札したものである。当然真正品としてオークションに出品されていたが「裸」なので要注意のコインだ。小生は真贋を見分ける自信がなく、アメリカのHeritageで1899年銘の画像を何枚も比較した。そこで気がついた点が2つある。(Heritageとはコイン以外のもろもろのアイテムを扱う大オークションサイトで、アーカイブが大変充実している。)そこで見つけたのが次の写真だ。小生のコインと良く見比べて欲しい。
上がHeritageの画像。下が小生のコイン。2枚を見比べると赤マルの部分2カ所が異なっている。左マルでは、右脇の下のマントに横に2本の銭が入っている。また右マルの中で、マントの形が微妙に違っている。(上の写真ではマントの幅が小さいが、下の写真では幅が広い)。さらに調べるとHeritageにスラブ入りコインで小生のコインと同じ特徴のコインもあった。下の写真がそれである。
見にくくて申し訳ないが、Heritageのサイト上ではZOOM機能を使い拡大できた。そこには小生のコインと同じ特徴がある。
そこで考えられる可能性は
①特徴の異なるDies(金型)が2種類あった。しかしこの特徴があるのは1899年だけであるので、その可能性は少ないだろう。
②贋金である。 小生の見立てでは、この1899年のコインは地肌の質感(写真ではわかりにくいが現物を直接見ると余計感じる)といい、エッジの馬の歯のできといい贋金の可能性を否定できない。ところがスラブ入りもあるということは……このコインを鑑定したPCGS、さらにはHeritageが贋金を真正品と間違えた可能性があるということだ。スラブは本物だが中のコインは贋金となっては初心者はお手上げだ。
では、コレクターとして、あるいは投資家として贋金をつかまないようにするにはどうしたらいいのか。それはたくさんのコインを見て自分の目を養い、かつ信頼できるディーラーから購入することだ。そう、多くの美術品収集家のようのに……。
■「贋金・贋札」②続く
■参考のために贋作コインの画像をアップする。次の2枚のコインは中国1914年1ドル試鋳貨(パターン)だが贋作と真正品。どちらが贋作か一目で判断できる。現在の贋作品はもっと出来がいい。
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